不耕起栽培の取り組み(2021)
耕盤層について
もりもり農園では、「より自然に近い環境で作物を育てたい」との思いから、一部分で不耕起栽培を取り入れています。やっている事は言葉の通り、「耕さない農業」です。耕運するとロータリーをかけた部分(作土層)は柔らかくなりますが、ロータリーが地面を叩きつけるため、やり過ぎると押し固められて作土層の下に耕盤層(硬い層)が出来てしまいます。
耕盤層ができると作物はその下に根を伸ばし難くなり、その結果、作物生育に必要な養分や水分を、十分に吸収することが出来なくなります。また耕盤層の上に水が溜まり畑作物では根を腐らせたり、水捌けが悪いために病気にかかったりします。
耕盤層を破砕し根が伸びやすい環境を整えるためには、プラソイラという大型機械で耕盤層を破壊したり、直根性の緑肥作物を植えて根っこの力で耕盤層を耕したりするのですが、プラソイラを購入するには費用がかかりますし、作物の力でやるには即効性がありません。そもそも耕盤層を作らない意識・工夫も必要ですよね。
根穴構造とは?
植物の種類や育っている環境などによって異なりますが、根は植物が見えている部分と同じくらい広がっている、なんて言われています。水分や養分を吸収したり、土壌生物と共生して生態系を豊かにしたりと重要な役割を持つ根っ子。できるだけストレスなく育ててあげたいですよね。
そもそも自然界の植物は、自身の力で根っ子を伸ばし、土を耕しながら何十年、何百年と生き続けてきました。根穴構造という言葉もありますが、土の中で腐った根が空気や水の通り道になり、団粒構造になるから、土が柔らかい。微生物や小動物の住みかを壊さないので、絶妙なバランスが生まれます。
農業との出会い
私が農業に興味を持つきっかけになったのが「奇跡のリンゴ」の木村秋則さん。テレビで偶然見かけたのですが、農薬を使わない栽培で失敗に失敗を重ね、自殺するところまで追い詰められながらも、山で自生するくるみの樹を見て、自然との共生やバランスが大事なんだと気づくようなお話です。農業にそれほど興味は無かったのですが、そこまで信念を持って取り組んでいる方がいるんだと、衝撃を受けた記憶があります。
昨年、現在の畑を借りて小規模ながら耕作を開始し、ミニトマトを200株ほど栽培したのですが、大タバコ蛾の幼虫が大量発生しました。実だけでなく樹の中まで食い散らかすので、見るも無惨な状態になっていきます。仕方がないので蛾の幼虫を見つけてはプチプチ捕殺、多い時には一日100匹以上いたかも知れません。
そんな折に松川に技術指導に来ていた自然農法センターの技術員の方から、「マルチの上に刈り草を敷くなど生態系豊かにする工夫をしてみたら?」という助言をいただきました。半信半疑ながらも言われた通り対応すると、少しずつカエルや蜘蛛などの小動物が戻ってくるではないですか!
真夏の炎天下が続く中、カエルなど小動物の憩いの場が無かったようです。残念ながら害虫を減らすところまで確認は出来ませんでしたが、生態系が豊かになることは実感できました。そんな経験から生態系を豊かにすることを、強く意識するようになりました。
大タバコ蛾の幼虫が食害している様子
マルチの上に刈り草を敷いた様子
今年の取り組み
今年から本格的に就農し、約4000平米の畑で作物を育んでいます。耕作放棄地から始めているので、土の肥沃度もまだまだですし、私個人の知識や技術もまだまだ足りません。先ずは作物を育てて営利を得る循環を作るところからなので、一部の区域で実験的に不耕起栽培を始めました。
不耕起栽培するにあたり実施した(している)ことをご紹介します。
1.畑を裸にしない
野菜など収穫した後に、畑を裸にすると土が痩せると言われます。雨風に直接晒されることで土が硬くなったり、養分が流亡したり、また雑草が生えてきたりと、作物にとって住みにくい環境になるからです。不耕起を始める準備として、刈り草と前作(ミニトマトの)残渣を畝部に敷き、その上に廃菌床を隙間なく撒きました。
2.土壌生物との共生
畑を裸にしない事により、土壌生物の憩いの場ができます。耕運など土壌生物の生態を脅かすことをしなければ、生態系は豊かになりますし、絶妙なバランスが生まれると考えました。また廃菌床に含まれる有用菌や「光合成細菌」「えひめAI」などの微生物資材を投入する事で、土壌微生物の活性化も促しました。
3.雑草駆除の工夫
現在勉強中ですが、雑草をザックリ分類すると①多年生の雑草(地下茎など)、②単子葉の雑草(イネ科など)、③双子葉の雑草の3種に分類できます。野菜との相性は、③>②>①の順に悪くなり、最も悪いのが①多年生の雑草になります。
対処法もそれぞれ異なります。
①多年生の雑草‥地下茎が残っていると再生するので根から抜き取る
②単子葉の雑草‥地際部分に成長点があるので、地際を刈り取る
③双子葉の雑草‥地上部の比較的高い部分に成長点があるので、地上部5センチ程度を刈り取る
耕作せず草刈りだけしている畑を見ると、①多年生や②単子葉が多く生えているのを見かけますが、地際ばかり刈り取っていると、③双子葉の雑草が減ってくるのも当然かも知れませんね。
当農園も①②の雑草が多く見かけられますので、草刈機は極力使わずに、先ずはそちらを取り除くことを優先しています。
現在の状態
畝部に敷いた刈り草、前作残渣や廃菌床のおかげで、ミミズや蜘蛛、カエルなどの土壌生物が生き生きと動き回っています。土もフカフカの状態で、土の物理性、生物性の面ではメリットが感じられます。
ただ土が肥えていないのと春先は地温が上がらないという面から、苗を植え付けても育ちが悪いです。また梅雨に入り雑草の勢いが増してくると、管理が追いつかなくなるといったデメリットも感じられます。その辺りの対処法がこれからの課題です。